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富士山での外国人2名の遭難事故について(2)

まず最初に、友人Dが自身のブログで今回のことを記事にしましたのでご紹介します。
友人の方が、写真や動画を同時にUPして詳細に書いてくれています。

http://fujisan.rash.jp/2012/05/120524-1.html 

 

「救助活動を振り返って」

さて、一昨日は遭難事故と救助活動について、一日の流れと共にご報告しました。

記事の公開に当たって、今回起こった出来事を当事者としてどこまでオープンにするべきか、正直悩みました。

熟慮の末、やはり私が大好きな富士山で今後このような不幸な事故が繰り返さないためにも、必要な情報はしっかりと公開したいと考えました。
そして、救助活動を行った3名の中で、私が唯一登山ガイドという立場であり、救助活動を指揮した以上、しっかりと救助活動そのものを振り返っておく必要があることも感じました。

そこで、まず事故と救助活動の経過を、プライバシーに配慮した上で、昨日公開をしました。

今回は自分自身が発見したAさんを無事に救出することができたので、結果論としては救助成功です。
しかし、自分自身の予測不能な事態がさらに起きていたら?
違った状況で事故に遭遇していたら?

今日は私を中心に3名が行った救助活動について振り返って、問題点・反省点・課題など、私自身が気付いたことを記録として留めたいと思います。

【状況把握と状況判断】

Aさん、Cさんと出会い、救助の必要性を感じた際に、まず最初に感じたのが「この雪面の状況では救助はできない」ということでした。
助けたいとは思うけど、安全に助けられる状況ではない。
と、冷静に状況の把握と判断できたことは、後から振り返ると適切であり、今回の大きなポイントになったと思います。

しかし、もしAさんに高度障害(高山病)や低体温症の兆候が出ていたり、大出血を伴う怪我をしていた場合、どうだったでしょうか?
この日、警察に通報した際、「風が強くて今日はヘリは飛べない」と言われました。

なるべく早く下山させなければならないという「焦り」の要素を生む事態が重なっていたとしたら、自分自身でも冷静な判断が出来ていたかどうか、分かりません。

遭難事故の際に、複数の問題が同時に発生する場合もありますので、このような時こそ、より冷静な判断が求められるのだと思います。

【救助技術使用の上で】

今回、救助にあたり、登山用の補助ロープ(8mm×20m)を使って安全確保を行いました。
この補助ロープやザイルを使用した確保技術は、本格的な雪山登山を経験されてる方や、登山ガイドなどであれば、ごく普通に身につけている登山技術です。

このように救助活動を行う上では、ロープでの安全確保や、応急処置法、CPR(人工呼吸&心臓マッサージ)など、特殊な技術を活用する場面が出てきます。
そのため、上記のような技術を持っている人ほど、その技術を「使ってみたくなる」ものです。
先日ちょうど、SNSの救急法関連の仲間が「持っている武器は使いたくなる」、とも表現していました。

重要なことは、自分自身がこれらの技術を持っていたとしても、自分自身に許される範囲内で、確実にコントロールできる条件下で、適切に使わなければならないということだと思います。

私も、Aさんを見かけるなり、まっさきに自分自身が持っているロープで確保することを考えました。
しかし、すぐには使いませんでした。

「本当に今ロープで確保して大丈夫なのだろうか?」
と自問自答してたのが、ちょうど下の写真の頃です。

fuji_ac01.jpg
そもそも、ここまで四つん這いで下りてこられたことが、奇跡でした。(写真提供:Cさん)

そして、この時は、急斜面の最中でハーネスの装着が難しいことと、雪面が硬く、Aさんが滑りだした場合ロープを使っていても安全確保が出来ないこと(自分が巻き込まれる可能性がある)があって、ロープを出しませんでした。

結果として、9合目までそう遠くはなかったので、Aさんがバランスを崩した時にすぐに体に手が届く位置に立って、一緒に下りて行く形となりました。

その後、雪が緩んで歩きやすくなり、Cさん、友人Dに先行して足場を作ってもらうことを決め、万全な体制を整えて、全員で体制を確認したうえで、ロープでの安全確保を行いました。

fuji_ac03.jpg
ロープで確保しての下山の様子(写真提供:Cさん)

【二次遭難の防止】

救助活動では「二次遭難」すなわち、救助しようとした私たちがさらに事故に巻き込まれることを防がなければなりません。

今回の救助活動では、9合目で時間をおいて、じっくり作戦を立てた後に行動したので、二次遭難のリスクを抑えることができたと考えています。

fuji_ac02.jpg
雪が緩むのを待つだけでなく、一呼吸置いて冷静に考える余裕が生まれました(写真提供:Cさん)

その中で、私が個人的に振り返って、反省している点があります。
Cさんは、Aさんと出会って、二人で下山を始めて9合目に辿りつくまで、Aさんにピッケルを貸していました。
その流れの中で、9合目からの下山の際も、Aさんがピッケルを持って下山しました。
このため、このことに気づいて私がピッケルをCさんに持ってもらうまで、Cさんはピッケルを持たずに下山していました。

Cさんの足取りがしっかりしていたので、滑落の危険性は少なかったと思いますが、Cさんが多少なりともリスクを抱えてしまっていたことになります。
緊張もしていたと思いますし、もっと早く対処すべき点だったと思います。

どうしても、要救助者の対応に目が向いてしまうので、救助者側の安全確保は考えすぎるぐらいでないといけないのかもしれません。

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